機関紙「全国一般福井」 283号(2013年5月1日)


「成長戦略」って、解雇規制の緩和

 安倍首相が景気回復に向けて行っているアベノミクス。その「三本の矢」といわれるのが、@大胆な金融緩和、A公共事業の拡大、B新産業の成長戦略の三つ。大胆な金融緩和によって、株価は上がりましたが、他面で円安により輸入品が値上がりし、家計はより苦しくなっています。全国世論調査でもアベノミクスで「所得が増えない」と答えた人は
69%にも上り、景気好転を「実感できない」という人が82%に達しています。こうした中で、政府が6月の発表に向けて取りまとめを急いでいるのが、「成長戦略」です。しかし、その中心は、労働分野の規制緩和。具体的には、以下のようなことが検討されています。

1.解雇規制の緩和――お金を支払えば簡単に首切り

 従来は、企業が整理解雇を行う場合も解雇以外の方法はないのかなど厳しい規制がありました。ところが、経済団体は、正社員の解雇ルールを緩和すれば、労働者の企業間の移動がスムーズに行われ、若年層の雇用機会も増えるとして、解雇の解決制度の導入を主張しています。これは、解雇要件に反するような場合でも多少の補償金を払えば簡単に労働者を解雇できるというものです。

2.労働移動助成金の拡大――政府がリストラを尻押し

 従来、民主党政権の下で、不況の中小企業での雇用を維持するために業績の悪化などによる休業に対して政府が助成金を支払うという雇用調整助成金制度がありました。自民党政権では、「成熟産業(不況業種のこと)から成長産業への労働移動」がスムーズに行われないという理由からこの制度を縮小し、雇用維持ではなく再就職を支援する制度に切り替えようとしています。企業が労働者を解雇する際に、再就職のために人材サービス会社などの研修を受ける費用を政府が援助するというものです。今でも大手電機会社などで「リストラ部屋」に送り込み、社員に退職を強要することが問題となっているにもかかわらず、これに政府が助成金まで支給しようというのです。

3.「地域限定正社員」の導入――工場閉鎖に伴い簡単に解雇
 通常の正社員の他に、働く地域や仕事の内容を限定して雇用する「地域限定正社員」制度の導入も検討されています。これは、企業が工場の海外移転や一定の部署を閉鎖する場合に、他部署への移動など雇用維持の努力をすることなく簡単に解雇が出来るようにするというものです。

4.労働時間の規制緩和――研究・事務職の残業代を不払いに
 第一次安倍内閣の時に労働組合の反対の声によりお蔵入りになったホワイトカラーエグゼンプション制度が、再び形を変えて導入が検討されています。これは、研究職・事務職の労働時間を仕事の成果によって決めるというもので、長時間労働になっても成果が出なければ残業代が支給されないことになります。

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