知っておきたい労働組合法
――「不当労働行為」とは


 皆さん、「不当労働行為」という言葉を聞いたことがありますか? これは、労働組合法の第七条で禁じられている使用者による組合活動を妨害する行為を指します。憲法の二十八条において、労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権が認められていますが、この権利を具体的に保障するために労働組合法で経営者による不当労働行為を禁じているのです。

 では、経営者のどんな行為が不当労働行為に当たるのでしょうか? これを知らないと経営者による組合活動への妨害を防ぐことができません。その意味で何が不当労働行為に当たるのかを理解しておくことは、組合活動を進める上で非常に重要なことです。

経営者によるこんな行為は違法行為です。
 経営者(権限のある管理職も含む)による以下のような行為は不当労働行為に当ります。

1.組合活動等を理由とする不利益扱い(第七条一号)

@組合員であることや組合を結成しようとしたことを理由にしての解雇や不利益な扱い。

例えば、退職の強要、賃金や一時金の査定での差別、労働条件での不利益な扱い、配置転換、昇進・昇格での差別などです。組合員にだけ残業させなかったり、会社の忘年会に参加させないことなども含まれます。

A採用の際に組合に加入しないことを条件にして雇用することや、有期契約者に対して組合からの脱退を条件にして雇用を継続すること。こうした不当な労働契約を「黄犬契約」と呼びます。

2.団体交渉拒否(第七条二号)

@正当な理由がなく団体交渉を拒否すること。この中には、正当な理由なく交渉を途中で打ち切ったり、上部団体の参加を理由に交渉を行なわなかったりすることも含まれます。

A「誠実に交渉を行なわないこと」(誠実交渉義務違反)も禁止されています。

例えば、経営者が賃上げ交渉の際に、退職金の切り下げに応じなければ賃上げはできないというように、別の条件を持ち出すことも不誠実団交の一つです。

3.組合活動への支配介入(第七条三号)

@組合結成に対する妨害。

組合結成の中心的な労働者の解雇や組合結成へのあからさまな非難。

A組合組織への介入。

例えば、組合選挙に際して役員人事に注文をつけたり、組合役員を懐柔するための買収や組合会合の内容を聞き出すためのスパイ行為。

B組合運営への介入。

組合からの脱退を奨励するような言動や正当な組合活動への警告・処分。チェック・オフなどの労働協約や労使慣行の一方的な破棄など。

C同一企業内の他の組合への優遇措置。

4.労働委員会への申し立て等を理由とする報復的な不利益扱い(第七条四号)

 ところで、こうした不当労働行為が行なわれた際にそれを救済する機関として労働委員会(第十九条)が設置されています。組合が労働委員会に救済を申し立てたことに対して経営者が組合役員に不利益な扱いをすることも禁じられています。

もし不当労働行為を受けたら

1.地本と連携して組合として抗議する

もしこうした不当労行為を受けた場合にはどうすればいいのでしょうか。まず、執行委員会などで具体的に「いつ・誰から・何を言われたか」を確認し、地本役員とも連携してただちに組合として抗議する必要があります。抗議すると余計に不利益な扱いを受けるのではないか、と危惧する人もいるかもしれませんが、経営者による組合活動の妨害を許しておけば、組合の弱体化につながりかねません。

2.労働委員会への救済の申し立て

それでも改善されない場合は公的機関である労働委員会に救済を申し立てることもできます。労働委員会で不当労働行為が認定されれば、救済命令が出されます。例えば、組合活動を理由とした解雇などに対しては、現職復帰が命じられますし、団体交渉拒否に対しては、団交に応じるように命令が出され、使用者はこれに従わなくてはなりません。


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