<毎日新聞>

命の格差――国の手厚い補助必要

 

 医師が搭乗し患者を救急搬送するドクターヘリが全国で導入され始めている。ヘリコプターは搬送時間を短縮でき、死亡率の低下が期待されるが、一方で費用の問題もある。NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク(HEM−Net)」の國松孝次理事長が出雲市内で行った講演を聴き、島根県の現状と、ドクターヘリ導入について考えた。【御園生枝里】

 國松理事長は元警察庁長官で、銃撃を受けて救急車で搬送された経験がある。「先生から『運がよかった。東京だから助かったんですよ』と言われた」といい、「命の格差を是正しなければならない。方法の一つとしてヘリコプター救急は検討するべき課題」と語った。

 国は全国でドクターヘリ導入を進める計画で、運航費や医師の人件費など年間約1億7000万円を都道府県と折半して医療機関に補助している。県によると、昨年度までに13道府県で導入された。

 中国地方では、岡山県で先進的に導入されている。山口県は今月中に導入の検討委員会を設け、隣の鳥取県は兵庫県と京都府と共同で導入を検討している。島根県では、隠岐に住む患者を本土へ緊急搬送する必要がある時は、防災ヘリ「はくちょう」で搬送している。1996年から試行を開始、98年から隠岐全域で本格的に始まった。県西部から東部や県外へ、県東部から県外への搬送も実施している。

 だが、防災ヘリは救命救急専用ではないので使えないこともあり、2002年から鳥取県防災ヘリ、海上保安庁や自衛隊のヘリにも要請し始めた。昨年度の急患搬送件数は80件、そのうち25件が県の防災ヘリ以外による搬送だった。

 また、隠岐の医師がヘリに搭乗して搬送すると、隠岐の医師が不足したり、一時的に休診になったりすることがある。そのため、本土から防災ヘリに島根県立中央病院か松江赤十字病院の医師が搭乗する体制にしている。昨年度の80件のうち隠岐の医師が搭乗したのが64件、本土の医師は46件だった。

 島根県は防災ヘリに県東部の医師が搭乗して搬送する体制を隠岐全域から県西部まで拡大しようと検討を始めており、医師体制や関係機関の連絡体制などの調整を図っている。ドクターヘリの導入について県は「費用の問題もあるが、まず医師体制がないと」と話す。県内の医師が不足しているうえ、365日待機する救急専門の医師体制を充実しなければならないのが課題だ。

 また、國松理事長は導入の最大の問題として「半額を都道府県費で賄う制度を取る限り、ドクターヘリをより必要とする予算規模の小さい県ほど、整備が遅れる」と指摘する。県がドクターヘリを導入するには国のより手厚い補助が必要だ。その中で、現状でどんな工夫ができるか、地域の、自分の問題として考えることが必要と教えられた。(毎日新聞、2008年10月16日付より要約)

 

(HEM-Net、2008.11.11)

トップページへ戻る