<FARE>

ヘリコプター救急の未来(9)

 

航空医療の発展のために

 救急患者を如何に早く医師のもとへ連れてゆくか。そのための体制維持は、医療機関と行政当局の両者にとって、今後の重要な課題となってきた。というのも自然災害にも人為災害にも、効果的で利用可能な航空医療システムは不可欠の対応手段とみなされるようになったからである。その実例がハリケーン・カトリーナで、航空機は現場と病院から重篤患者の避難に使われ、数千人の命を救出した。

 救護された多くの人命と、それに要した医療費の総額を考え合わせると、航空医療の費用効果が明らかになる。他の外傷システムなどの医療活動、CATスキャンといった最新技術、心臓発作の治療などの専門外科術と同様、航空医療にも高額の費用がかかる。したがって航空医療は、医療制度ならびに防災計画の重要な部分として、いつでも出動できる体制と共に、公共政策と公的資金で維持してゆかねばならない。

 アメリカ厚生省によれば「世界の60才以上の人口は、2000年現在6億500万人だったと推定されるが、2050年までにほぼ20億人に増加するとみられる」。この傾向は米国では特に顕著であり、地方では急速に高齢化が進んでいる。

 こうした高齢化社会が拡大するにつれて、日常生活の中で大けがをする人が増え、心臓発作、脳卒中、腹部大動脈瘤や胃腸の出血などの緊急事態におちいる人が増加する。

しかも最近の調査では、これら高齢患者の多くが所要時間内に救命救急センターに到着していないことが判明した。こうした実態からも、航空医療の必要性と重要性は今後ますます増大するとみられる。

 一方で、医療制度に対する経済的な逼迫は、今後も増すばかりである。したがって医療に対する需要と利用可能な手段との間の不均衡は、ますます深刻になる。この不均衡は、特に地方において、病院での専門治療と救命技術の利用の可能性を侵食し続ける。そのため専門的な医療施設への搬送体制を改善する必要があり、その点でも航空医療サービスの必要性が増大する。オーストラリアの「フライング・ドクター」システムは、遠隔地の住民に航空機で救急医療と日常医療の両方を提供する成功例である。

 アメリカ航空医療学会(AAMS)は、誰に対しても質の高い航空医療、救命治療を利用できるように保証することが不可欠であると確信している。そのためには、あらゆる地域に航空医療サービスを普及させ、それを公共政策と公的資金で支えることが必要と考える。(完)

(HEM-Net、2007.3.2)

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