<FARE>

ヘリコプター救急の未来(5)

 

航空医療の基本的な任務

完全な救急体制の実現

 「ゴールデン・アワー」という理念は、患者が1時間以内に医師のもとに到着することが如何に重要であるかを意味する。その実現のためには救急体制をしっかりと組上げ、高度の救急治療を提供できるようにしなければならない。たとえば、航空医療隊員は、一次救命処置よりも二次救命処置、二次救命処置よりも医師レベルの治療ができるようでなければならない。

 そこで、外傷に対する救急体制を完全なものにするには、以下の事項を実現する必要がある。

 これらの要素をうまく組織化している実例はメリーランド州の救急体制で、他の地域もそれにならうのが望ましい。すなわち外傷センターを備えた組織的な外傷治療システムが必要であり、そうした体制が命を救うことは十分実証されている。

 ヘリコプターを使った救急出動が地上手段にくらべて死亡率が低いという救命効果の分析は、1980年代初期から始まり、最近までにほぼ実証された。

 そうした研究論文は1980年代以降、数多く発表され、ほとんどの論文がヘリコプターを使えば死亡率が下がり、社会復帰率が向上すると結論づけている。

 ヘリコプター救急は、現場から手術室までの時間を大幅に短縮する。地上の救急車と同時に救急ヘリコプターを出動させるならば、米国民の54%以上が60分以内に外傷センターに到着することができる。ヘリコプターなしでは、この時間短縮は不可能である。

 また、初めからヘリコプターを使えば、患者がいったん小規模な診療所などに送りこまれ、そこで時間を無駄にするようなことが少なくなる。たとえ最終的にヘリコプターを使うにしても、途中でそうした病院を経由することは、外傷患者に悪影響を与えることが明らかになっている。

 将来は、携帯電話の技術と車の自動衝突通報装置(ACN:Automatic Crash Notification)の技術が改善され、衝突事故の発生から覚知に要する時間がほとんどゼロになるであろう。この技術は、衝突した車から自動的に発信される信号によって、衝突による負傷の程度が分かる仕組みになっており、如何に遠隔地であろうと事故発生から数分でヘリコプターが出動することができる。したがって、けが人への救急対応は大きく改善されることとなる。

ヘリコプターの救命効果

 ヘリコプターの救命効果について、最近の調査例から、次のことが実証された。

 外傷性脳損傷(TBI)は、多発外傷と同時に起こることが多く、小児ならびに最も生産性の高い成人の死亡原因、および身体障害となる原因の第1位である。外傷性脳損傷は、処置までの時間が決定的な要因となる。都市以外では、外傷性脳損傷の処置に必要な脳外科施設の存在が低いので、救急治療にとっては大きな問題である。

 しかし最近は、航空医療隊員による早期の治療と、脳外科医による最終的な治療を受けるための航空搬送により、この問題を克服することができるようになった。そのため中程度から重度の外傷性脳損傷を受けた患者では、大幅な改善が実現している。

 ヘリコプター救急は一般に、次のような状況での外傷治療に有効である。

へき地医療に重要な役割

 山間へき地と辺境地域では、ヘリコプターと飛行機が特に重要な役割を果たす。


昨秋フェニックスで見たPHI救急機EC135

(HEM-Net、2007.2.21)

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