<毎日新聞>

君津ドクターヘリ運航開始

 

 千葉県君津中央病院に1月5日、ドクターヘリが配備される。千葉県としては2機目のドクターヘリで、1機目は7年前に日本医科大学千葉北総病院に配備され、年間700件近い出動実績を誇る。2機のドクターヘリ配備は静岡県に次いで2県目。

救急医療の「新しい砦」

 昨年11月初旬、君津中央病院の救急医、大谷俊介(32)は千葉北総病院にいた。実際にヘリコプターに搭乗する研修が行われたのだ。「ドクターヘリ出動」の連絡を合図に、大谷はヘリポートに走り、北総病院のフライトドクター、八木貴典(37)と飛び立った。

 大谷にとっては5回目のフライト。16分後、長柄町の水上小校庭に降り立った大谷を待っていたのは、大型トラックとの衝突事故で重傷を負った女性(73)だった。意識はなく、胸部打撲で右の肺が気胸と判断。酸素を取り込めず、血圧低下やショック状態も予想される。急いで肺にトロッカー(空気を抜くための管)を入れた。

 そのとき八木が言った。「左にもトロッカーを入れたほうがいいですよ」

 狭い機内では座席配置の関係で医師が患者の左側には回りにくい。もし、左も気胸だった場合、搬送中に容体悪化の恐れもある。八木の経験からの一言だった。

 処置を受けた女性はドクターヘリで亀田総合病院(鴨川市)に運ばれ一命を取り留めた。北総病院に戻った大谷は「この患者さんはヘリコプターでなければ救えなかった」とほっとした表情。

 研修は実機搭乗や航空知識を学ぶ安全講習だけでなく、狭い空間での処置に慣れるため救急車を利用して行う「初療研修」など盛りだくさんだ。騒音や振動には慣れたが、痛切に感じたのは現場での「不自由さ」。処置の仕方は病院と同じでも、ヘリでの出動は緊張感が違う。「冷静に判断できるようになるには場数が必要だ」と話した。

看護師にも環境の落差

 君津中央のフライトナース、河野和子(43)も医師と同様に北総病院で搭乗研修を受けた。君津中央には救急の看護師が約60人いるが、うち8人がフライトナース要員。研修期間中9回のフライトを経験したが、病院と現場での治療という環境の落差に、戸惑いは大きかった。

 現場では看護の技量以上に、短時間で患者の状態を聞き出したり、救急隊に協力を求めたりする迅速な判断が求められる。初めて出動したのは、酒々井町で女性が急性肺炎で意識不明になったケース。「関係者が走り回り、患者やその家族に声をかけづらかった。挿管など病院ではそれほどでもないことも、現場では難しく感じた」と話す。

 河野は看護師になって22年間、君津中央で勤務してきた。そのうち12年間は救急専門。救急の看護師として技量を高めたいと、ヘリ搭乗に志願した。

 木更津出身の河野は言う。「遠方から長い時間をかけて来られる患者さんも多い。ヘリが導入されることは、地域医療へのサポートになると思う」。配備後は、医師と看護師それぞれ8人で「ヘリ当番」のローテーションを組み、現場に向かう。=敬称略(黒川将光、柳澤一男、毎日新聞2009年1月1日付より要約)

(HEM-Net、2009.1.5)

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