<96歳・私の証 あるがまヽ行く>

ヘリコプター救急のいま


日野原重明
(聖路加国際病院理事長)

 

 きょう20日は「空の日」です。航空思想や活動普及のため、1940年に定められた「航空日」が、一般に親しまれるように92年に名称が変わったそうです。

 空を利用して人命を救助する「ドクターヘリ」の存在が、最近はだいぶ認知されてきました。しかし、まだまだ対応できる医師や看護師の数は少なく、ヘリポートなど設備面の整備も遅れています。

 政府や地方自治体に働きかけるには、国民のみなさんが関心を寄せてくれることが必要です。啓発手段として、メディアの果たす役割は大きいと思われます。

 フジテレピ系列で先ごろ放送を終えた連続ドラマ「コード・ブルー」は、救急ヘリに乗る若いフライトドクターたちの姿を見せて、多くの視聴者の関心を集めたようです。増本淳プロデューサーはドクターヘリの生々しい現場を再現し国民に見せることで、その必要性を訴えたそうです。

 救急医療の重要さを早くから取り上げたのは同じフジテレビのニュースキャスターで解説委員の黒岩祐治さんです。彼が企画・取材・編集を手がけ、89年から2年にわたって放送された「救急医療にメス」の一連の報道は、後に救急救命士の誕生に結びつきました。

 さて、救命救急の現場にいつでも出動できるヘリコプターを、各都道府県に備え、かつ出勤できる医師や看護師や救急救命士を常置するための国の予算には、制限があるのが現実です。

 昨年やっとドクターヘリ特別措置法が制定されました。この法律ができた背景には「特定非営利活動法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)」など、民間のNPO団体の努力や働きかけがありました。HEM-Netは、全国的な救急ヘリによる病院間のネットワークづくりを目的にした組織です。活動の内容は、公式ウェブサイトに詳しく、現在、寄付のお願いと賛助会員の募集をしているそうです。

 この団体を立ち上げた一人で、現在、理事長を務める国松孝次氏は、元スイス大使で、元警察庁長官です。国松さんは学士会会報の今年の新年号に「ヘリコプター救急の普及と命の危機管理」と題した啓発的な記事を寄せています。学識者だけに読まれるのはもったいない内容でした。

 ヘリコプター救急の認知に協力したいと、今回、この欄で取り上げました。(朝日新聞2008年9月20日付)

(HEM-Net、2008.9.29)

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