深田式クリノコンパスのメンテナンス
深田式クリノコンパス(昭和測器製)は地質屋にとっての「定番」商品の一つで,多くの愛用者がいます.「日本における代表的な地質調査機器」(梅沢俊一氏)ともいわれます.堅牢な製品ではありますが,やはりメンテナンスが必要です.
こんな時にはこんな対処を
・ 水没させた→きれいな水ならヘタなことはしない方がよい.ガラスをはずして分解・乾燥.
・ 泥水で汚れた→分解掃除・乾燥
・ 磁針の動きが悪い→分解掃除,場合によっては交換
・ 傾斜針の動きが悪い→分解掃除
・ ストッパー(A)の調子が悪い→分解掃除
・ フタ(B)の開閉が甘くなった→ネジの調整
・ ガラス(@)・鏡(C)が割れた→交換
以下に述べる分解掃除でも直らない場合には部品を交換する必要があります.ただし昭和測器は倒産してしまいましたので,部品の入手などは今後困難になりそうです.
分解掃除のしかた
準備するもの:マイナスドライバー(2,3種類必要)・潤滑油・スプレー式のクリーナ・ティシュペーパー・その他必要に応じて
1. 作業は平らな,広めの場所でおこなう.細かい部品も多いので紛失しないように注意して作業する.どうしても野外でしなければならないような場合にはシートなどを敷く.
2. ガラスを固定している留金をマイナスドライバー(千枚通しのような先のとがったものでもよい)ではずす.接合部分を探し当て力をいれてこじる.ケガしないように.また勢い余ってガラスを割ったりしないように.
3. ガラス板をはずし,磁針・座金・傾斜針もはずす.これらが濡れたり汚れたりしている場合には拭き取って乾燥させる.磁針は裏側の軸受け部に水分や泥がついていないかチェックし,あれば取り除く.盤面は注油厳禁! 傾斜針が盤面にくっついて動かなくなる.
4. 中心の針も水分や汚れを拭き取る.これが曲がっていたり,先端に異常がある場合には,無理に自分で直さないで修理を依頼した方が無難.
5. ストッパー関連の小さいネジをはずして,ストッパーを取り外し,水分や汚れを拭き取る.注油してもよい.ストッパーのピンが曲がっていることもある.これはペンチなどでまっすぐにできる.磁針・傾斜針側のストッパーと手元側のピンは梃子のような金具で関連づけられており,微妙なバランスがとれている.このため,こちら側のスムーズな動きの確保も大切.
6. バラバラに分解しておいて,乾燥させたりスプレー式のクリーナで泥や細かいゴミを飛ばす.油は厳禁.アリダードのストッパーになっている小ネジもはずすと効果的に掃除できる(ここから空気を送り込む).柔らかい布でほこりや水分を拭き取る
7.方位と傾斜の表示盤は座金をはずせば取り出すことができる(はずだ)が,元の通りに位置を復元するのは至難の技なので,してはいけない.
8. 整備を終えたら,ガラス板をはめ込む前に動作チェックをおこなう.磁針がうまくまわらないときには,
a.水分や汚れ・サビの拭き取りかたが足りない
b.磁針あるいは軸受け部の摩耗
傾斜針がうまくまわらないときは,
c.乾燥不足
d.中心針との接触不良・サビつき
が考えられる.bなら部品交換.b以外は掃除と調整のしなおし.
9.調子が戻ったら逆の手順で組み立てる.
10.フタの開閉の調節:大きめのマイナスドライバを使う.両側のねじを適度に締める.締めすぎるとフタが開けづらくなるし,ゆるめすぎると固定できなくなる.ときどきは調整が必要.長いこと使うと,本体とフタの間に挟まれている座金が摩耗し,締まらなくなる.こういう場合は座金を交換する.
11.鏡の交換:フタの裏側についている鏡がまれに割れることがある.これも交換できる.フタ表面の2個のねじ(これだけはプラスねじ)をはずすと,押さえのプレートごと鏡がはずれる. 鏡とプレートは脱落防止用に斜めに切ってあるので,取り付けるときには間違えないだろう.